トランジスタの特性

トランジスタ電子回路の設計に欠かすことのできない重要な素子です。電子回路では、増幅回路が非常に重要な役割りを果たします。このページでは、増幅回路を構成するために必要なトランジスタ役割り特性について説明します。

1. トランジスタの役割りとは?

このページをご覧になられている方の中には、トランジスタの役割りについてご存知の方もいると思います。しかし初心者の方もいると思うので、改めてトランジスタの役割りや重要性について述べたいと思います。

携帯電話の信号増幅のイメージ
図1. 携帯電話の信号増幅のイメージ

アナログ回路にとってトランジスタを一言でいうと「増幅素子」です。電気信号(電圧や電流)を「増幅」することができるということは、非常に重要なことです。

例えば、携帯電話などの通信機器は空中を飛んでくる電波を捉えて音声に変換します。この電波は非常に微弱な信号であるため、増幅してやる必要があります。

また、世の中にあふれているエレクトロニクス製品は、センサー機能を持つものが多く存在します。電話には音を捉えるセンサー(マイク)、デジカメには光を捉えるセンサー(CCDやCMOSセンサー)、調理用の電化製品には温度センサーなどが使われます。しかし困ったことにセンサーというものは多くの場合、ごく微小な電気信号しか発生しません。そのため、電気信号を増幅する必要があります。

このように「増幅できる」ということは非常に重要なのです。これら電気信号の「増幅」は、トランジスタにより実現することができます。

他にも増幅することの重要性はあります。第5章で説明する「オペアンプ」という回路は、アナログ回路には絶対に欠かすことのできない回路です。このオペアンプは、回路技術を駆使してトランジスタを組み合わせて作られており、数百倍、数千倍以上の電圧増幅率(ゲインとか利得とか言います)を持ちます。

この「数百倍、数千倍以上の増幅率」と聞いて驚く方もいると思います。きっと、「そんなに増幅してどうするの?!」と思ったに違いありません。ここでは少しの説明にとどめますが、オペアンプの数百倍、数千倍以上の増幅率を直接使って信号を増幅するような使い方をすることは、まずありません。

オペアンプは、フィードバック(負帰還)という技術を使うことによって非常に高精度な信号処理を行うことができます。詳しくは、「4-7. フィードバック(負帰還)」や「5-1. オペアンプとは」をみてください。

何にしても、電気信号を増幅することのできるトランジスタは、今日のエレクトロニクス分野において重要な役割りを果たしています。それでは次に、トランジスタの特性(一般的に静特性と呼ばれているもの)について説明していきたいと思います。


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  • トランジスタやダイオードといった電子回路に欠かすことのできない半導体素子について、物質的特性から回路的特性に至るまで丁寧に説明されている。
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2. トランジスタのI-V特性

トランジスタとして現在よく使われているものとして、「バイポーラトランジスタ」と「MOSトランジスタ」があります。回路図で書くと図1 (a),(b) のようになります。(同図 (a) は npnトランジスタ、同図 (b) は nチャネル形MOSトランジスタと呼ばれるものです。)

トランジスタの回路図(1)
図1. トランジスタの回路図

図1 (a) はバイポーラトランジスタの回路図でコレクタベースエミッタと呼ばれる3つの端子を持ちます。一方、同図 (b) はMOSトランジスタの回路図でドレインゲートソースと呼ばれる3つの端子を持ちます。

ここではトランジスタの物理的な構造の説明は省略しますが、電流と電圧の関係について説明したいと思います。これから説明する電流と電圧の関係は、一般にトランジスタの静特性と呼ばれています。(バイポーラトランジスタとMOSトランジスタの特徴の違いについては、後ほど説明します。)

まずは、Ic - Vbe特性(または Id - Vgs特性)と呼ばれる特性について述べます。

(1) Ic - Vbe特性(または Id - Vgs特性)

図1 (a) のバイポーラトランジスタは、ベース−エミッタ間の電圧を Vbe 、コレクタからエミッタに流れる電流を Ic としたとき、図2 (a) のような特性になります(ただし、コレクタ−エミッタ間の電圧 Vce が十分に大きい場合)。

トランジスタのI-V特性(1)
図2. トランジスタのI-V特性 (1)

Vbe がある電圧を越えると電流が流れ始め、さらに Vbe が大きくなるに連れて電流が大きくなります。

同様に図1 (b) のMOSトランジスタは、ゲート−ソース間の電圧を Vgs 、ドレインからソースに流れる電流を Id としたとき、図2 (b) のような特性になります(ただし、ドレイン−ソース間の電圧 Vds が十分に大きい場合)。

こちらも Vgs がある電圧を越えると電流が流れ始め、さらに Vgs が大きくなるに連れて電流が大きくなります。

バイポーラトランジスタは、Vbe の増加に対して指数 e のべき乗の関数で増加していきます。一方、MOSトランジスタは、Vgs の増加に対して 2乗の関数で増加していきます。しかし、バイポーラトランジスタもMOSトランジスタも似たような特性を示します。

この、Vbe (もしくは Vgs )が増加すると電流が増加するという特徴を利用することにより、次節「4-3. 増幅回路の動作原理」で説明するように増幅回路を構成することができます。

それでは次に、Ic - Vce特性(または Id - Vds特性)と呼ばれる特性について述べます。

(2) Ic - Vce特性(または Id - Vds特性)

もう一つ、トランジスタの重要な I-V特性について説明します。先ほどは Vbe (もしくは Vgs )をグラフの横軸として電圧を変化させ、そのときの電流特性について述べました。

今度は Vbe (もしくは Vgs )の電圧を固定し、コレクタ−エミッタ間電圧 Vbe (もしくはドレイン−ソース間電圧 Vgs )を変化させたときの特性について説明します。図3 に再び図1 を示します。

トランジスタの回路図(2)
図3. トランジスタの回路図

例えば、 Vbe (もしくは Vgs )を 1V , 3V , 5V と固定したときに、Vce (もしくは Vds )を変化させたときの 電流特性を図4 に示します。

トランジスタのI-V特性(2)
図4. トランジスタのI-V特性 (2)

図4 の特徴としては Vce (もしくは Vds )がある程度大きくなると、流れる電流があまり変わらなくなるというところにあります。つまり、ほぼ一定の電流になるということです。この特性は、電圧変化に依存せず一定の電流を流す電流源として利用されます。

以上が、バイポーラトランジスタとMOSトランジスタの I-V特性(静特性)についての説明です。

3. バイポーラトランジスタ と MOSトランジスタ の特性の違い

ここでは、バイポーラトランジスタMOSトランジスタ特性の違いについて述べたいと思います。それぞれに向き不向きがあるのですが、それを表1 にまとめてみました。

表1. バイポーラトランジスタ と MOSトランジスタ の特性の違い

   バイポーラトランジスタ   MOSトランジスタ 
 利得(ゲイン)    
 高周波動作    
 ノイズ特性    
 集積度    
 消費電力
(※ 注1)
   

(※ 注1) 多機能なデジタル回路のような大規模な回路を構成した場合の比較です。

まず始めに、「利得ゲイン)」についてです。利得とは分かりやすい言葉で言えば「増幅率」です。電気信号を増幅するとき、高い利得を得るためにはバイポーラトランジスタの方が有利です。

その他にもバイポーラトランジスタは、MOSトランジスタに比べてより高い周波数で動作することが可能です。また、ノイズ特性もバイポーラトランジスタの方が良いと言われています。携帯電話などの無線機器が受信しなければならない信号は一般に周波数が高く、また微小な信号であるため、高周波動作やノイズ特性が重要となります。

一方、MOSトランジスタは小さく作ることに向いており、微細化することにより高い集積度を実現することができます。トランジスタをシリコンなどの半導体物質の上に多数構成する集積回路において、MOSトランジスタは非常に有利です。

小さな面積に多くのトランジスタを構成することができるため、MOSトランジスタはデジタル回路として使用することに向いています。デジタル回路として使用した場合、MOSトランジスタは動作時以外は電流が流れないという特長を持ちます。つまり、低消費電力です。

前節「4-1. アナログ電子回路の基礎」でも述べましたが、MOSトランジスタはデジタル回路として使用することに向いていますが、近年ではアナログ回路としても使用されます。

かつての電子回路の設計というのはほとんどがアナログ回路の設計だったのですが、近年のデジタル信号処理技術の発展は目覚しいものがあり、それに伴い微細化や消費電力といった点で有利なMOSトランジスタを使ったデジタル回路が大きく進歩を遂げてきました。

デジタル回路が大きく発展したとはいえ、高性能な回路特性の実現にはアナログ回路が必要な場面が多いのも事実です。そのため、MOSトランジスタでアナログ回路を構成し、同一のシリコン上にアナログ回路とデジタル回路を作り込んでしまう、いわゆる「デジタル・アナログ混載」の回路設計が盛んに行われるようになってきました。

デジタル・アナログ混載の回路設計は非常に重要で、微細化がしやすいMOSトランジスタを使うことで「小型化」、「高機能化」が可能となります。MOSトランジスタの微細化は年々進んでおり、世の中の数多くの電化製品が年々小さくなり、高機能化していくことに重要な役割りを果たしてます。

さて、それでは次節「4-3. 増幅回路の動作原理」でトランジスタを用いた増幅回路の説明をしたいと思います。