電子回路設計の基礎(実践編)> 4-1. LED回路を作る
LED回路を作る
LED(発光ダイオード)は、近年、照明などをはじめ様々な場所で目にするようになってきました。本章では、LEDの明るさを調整する制御回路を作ります。この回路を学ぶことで、PWM(Pulse Width Modulation)信号やLEDの制御方法を理解することができます。
1. LED回路の作成に必要な部品
「第4章 明るさ調節 LED回路」で使用する部品を表1 にリストアップします。本章で学習するために必要な電子部品です。
部品名 | 値 | 数量 |
抵抗 | 2.2 kΩ | 3 |
抵抗 | 10 kΩ | 1 |
抵抗 | 33 kΩ | 3 |
抵抗 | 220 Ω | 1 |
抵抗 | 1.5 kΩ | 3 |
コンデンサ | 0.1 μF | 1 |
可変抵抗器 | 100 kΩVR | 1 |
オペアンプ | 3 | |
NPN型トランジスタ | 1 | |
LED(発光ダイオード) | 1 |
※ 部品の入手方法は実践編 第1章「1-4. 電子部品などの揃え方」をご参照ください。
※ 電圧測定や波形観測のための測定器については同じく第1章「1-3. 必要な工具・測定器」をご参照ください。
LEDとは Light Emitting Diode の各単語の頭文字を取ったもので、日本語では発光ダイオードと言われています。最近では照明にLEDが利用されていますが、発光効率の良さや低消費電力といった特徴が大きな魅力です。
LEDの形状は物によって様々ですが、代表的なものを図1 (a) に示します。
図1. LED(発光ダイオード)
図1 (a) は真横から見た図で、配線の長い方が + 端子で「アノード」と呼ばれます。一方、配線の短い端子が - 端子で「カソード」と呼ばれます。また、アノードからカソード側へ電流を流すことにより、LEDは発光します。
LEDは流れる電流の方向が決まっているため、実際に使用するときには注意が必要です。アノードとカソードを間違えると光りません。図1 (b) に示すのがLEDの回路記号です。
LEDの明るさについてですが、流れる電流値に応じて変わるのも大きな特徴です。流れる電流値が大きいと明るく光り、小さいと暗く光ります。
それでは次に、LEDを制御する回路について説明します。
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2. LEDを制御する回路の種類
図2 (a) はLEDを点灯させる最も簡単な回路で、実践編「2-1. キットで遊ぼう電子回路」で紹介した学習キットの初めに出てくる回路です。また、先ほど述べましたが、LEDは流れる電流量によって明るさが変わります。
図2. 最も簡単な LED回路
この図2 (a) の回路では、抵抗 R に流れる電流が適切な値になるように抵抗値を決める必要があります。なぜなら、この抵抗 R に流れる電流がそのままLEDに流れるためです。
LEDに流れる電流は抵抗の値で決まることから、図2 (a) の抵抗を同図 (b) のように可変抵抗 VR に変えることで、明るさを調整することができる回路になります。
この回路は非常に簡単な回路でいいのですが、問題があります。それは、LEDに流れる電流量が変わると、光のスペクトルが変わるということです。簡単に言うと、色が変わってしまうということです。
例えば、LED照明について考えてみましょう。LED照明は、自分の好きな明るさに変更できるものがありますが、図2 (b) の方法を使ってしまうと明るさによって色が変わってしまうことになります。これでは、商品としても魅力が落ちてしまいます。
この問題を解決するために用いられるのが、PWM(Pulse Width Modulation)信号を用いる方法です。PWM信号については、次にページ「4-2. PWM信号を作る」で詳しく説明しますが、簡単に言うと図3 のような信号です。
図3. PWM信号
図3 (a) の信号はパルスの幅と 0V の期間が同じですが、同図 (b) や (c) のように自由にパルスの幅を変えることができる信号をPWM(Pulse Width Modulation)信号といいます。このPWM信号を用いたLED回路については、「4-3. PWM信号を使ったLED回路」で説明します。
3. 本章「LED回路」の流れ
このページでは、本章で学習するLEDの明るさ調整の概要について述べてきました。次のページ以降から具体的に順を追って学習を進めていきます。以下に 4-2. 以降の学習の流れを示します。
- 4-2. PWM信号を作る
- 4-3. PWM信号を使ったLED回路
- 4-4. 反転増幅回路を作る
- 4-5. 非反転増幅回路を作る
「4-2. PWM信号を作る」では、任意のパルス幅を作ることができるPWM信号発生回路について学びます。PWM信号発生回路は、本章で学習するLEDの明るさを調節する回路を構成するときに使います。
「4-3. PWM信号を使ったLED回路」では、PWM信号発生回路を使ってLEDの明るさを調節する回路を構成します。明るさの調節は、可変抵抗を使って行えるようにします。可変抵抗の抵抗値を変えてLEDの明るさが変われば、正しく回路を構成できたことになります。
「4-4. 反転増幅回路」と「4-5. 非反転増幅回路」では、より使いやすいPWM信号発生回路にするために増幅回路を学びます。信号増幅は、電子回路のありとあらゆる場面で使われており、非常に重要な回路技術です。是非、学習してみてください。
それでは、以上で述べた内容に従ってLED回路を学習していきましょう。