電子回路設計の基礎(実践編)> 3-6. 矩形波(方形波)発生回路の理論的な理解
矩形波(方形波)発生回路の理論的な理解
このページでは、矩形波(方形波)発生回路の出力の周波数の数式を求めてみましょう。周波数の式が分かれば、目標の周波数にするためは何をどうすればいいかが分かります。このページは実験のページではありませんが、興味がある方はご覧ください。
1. 矩形波(方形波)発生回路の周波数の式
図1 がこれまでに作成した矩形波(方形波)発生回路の回路図です。前ページ「3-5. RC回路と時定数」では、抵抗 R4 の値とコンデンサ C1 の値によって下図の回路の周波数が決まることが分かりました。
図1. 矩形波(方形波)発生回路
このページは実験のページではありません。数式を計算して周波数の理論式を求めるため、少し難しい部分もあるかもしれませんが、興味がある方はご覧ください。
それでは、図1 の矩形波(方形波)発生回路について、周波数の理論式を求めて行くことにしましょう。まず、Vout の電圧が 0V → Vcc に変化したときの B点の電圧について考えていきましょう。
前ページ「3-5. RC回路と時定数」で述べた通り、RC回路の出力である B点の電圧は式 (1) に従います。
・・・ (1)
ここで、Va は 1/3 × Vcc から Vcc までの電圧です。
Vout の電圧が 0V → Vcc に変化するタイミングは、B点の電圧が 1/3 × Vcc のときです。そのため B点の電圧は 1/3 × Vcc から Vcc に向けて図2 のように変化します。
図2. B点の電圧の立ち上がり
何もなければ、このまま図2 に示す点線に沿って Vcc まで電圧が上昇するのですが、B点の電圧が 2/3 × Vcc になったとき Vout の電圧は Vcc → 0V に変化します。
ここで、図2 の Tr の時間を求めることにします。時間 Tr のときの電圧は 1/2 × Va ですので、式 (1) から式 (2) を求めることができます。
・・・ (2)
式 (2) を変形していくと式 (3) 、式 (4) となります。
・・・ (3)
・・・ (4)
よって、時間 t は下式のように求まります。
・・・ (5)
ln(1/2) = -0.693 ですので、時間 t は最終的に式 (6) のようになります。
・・・ (6)
つまり、式 (6) が図2 の Tr になります。Tr の式を改めて式 (7) に示します。
・・・ (7)
それでは次に、Vout の電圧が Vcc → 0V に変化したときの B点の電圧について考えていきましょう。RC回路の出力である B点の電圧は式 (8) に従います。
・・・ (8)
ここで、Va は 2/3 × Vcc から 0V までの電圧です。
Vout の電圧が Vcc → 0V に変化するタイミングは、B点の電圧が 2/3 × Vcc のときです。そのため B点の電圧は 2/3 × Vcc から 0V に向けて図3 のように変化します。
図3. B点の電圧の立ち下がり
何もなければ、このまま図3 に示す点線に沿って 0V まで電圧が上昇するのですが、B点の電圧が 1/3 × Vcc になったとき Vout の電圧は 0V → Vcc に変化します。
ここで、図3 の Tf の時間を求めることにします。時間 Tf のときの電圧は 1/2 × Va ですので、式 (8) から式 (9) を求めることができます。
・・・ (9)
式 (9) を先ほどと同じように解くと、時間 t は式 (6) と同じになります。つまり、図3 の Tf は式 (10) になります。
・・・ (10)
以上より、図4 のように矩形波(方形波)発生回路の 1周期の時間が分かります。
図4. 矩形波(方形波)発生回路の 1周期の時間
1周期の時間 T は下式のようになります。
・・・ (11)
周波数 f は周期の逆数で求めることができるので、周波数 f = 1/T となります。よって、矩形波(方形波)発生回路の周波数の式は下式になります。
・・・ (12)
それでは次に、式 (12) の理論式と実際の回路の周波数を確認してみましょう。
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2. 周波数の式と実際の動作の比較
先ほど「1. 矩形波(方形波)発生回路の周波数の式」で求めた数式と、実際の回路の動作を比較してみましょう。
式 (13) が先ほど求めた矩形波(方形波)発生回路の周波数 f の式です。
・・・ (13)
この式に R4 = 33 kΩ、C1 = 0.1 μF を代入すると下式のように 218.6 Hz となります。
図5 は「3-4. 矩形波(方形波)発生回路」で作成した矩形波(方形波)発生回路の出力波形です。
図5. オシロスコープの画像
周波数は上図のように 207.3 Hz となっており、ほぼ理論式から求めた値と等しいことが分かります。式 (13) を使えば、目標の周波数にするためは抵抗 R4 とコンデンサ C1 の値をどの様に設定すればいいかが分かります。